-豪華装丁版の写真集を作ったきっかけを教えてください。

きっかけは高品質写真集をつくってみないか、というお話しをいただいたことです。出力に使用するインクジェットプリンター「Canon DreamLabo 5000」で制作された写真集の知識がなかったので、他の作家さんの実際に作った写真集や、プリントも色々な用紙を見せていただきました。率直に「すごく綺麗だな」「作ってみたいな」と感じました。 私は写真の基本は大判で見てもらうことだと思っています。是非写真展にお越いただき臨場感を味わっていただきたいのです。そして、写真展と対になる写真集は、その記憶をご自宅でくつろぎながら思い返していただくことができるのでとても大事に考えています。 今回、写真展開催のタイミングで、展示作品と類似の紙を使用した高品質写真集が作れるというお話しをいただいて、自分でもやってみたいなと今回の制作に至りました。

-同名の写真集が同時期に出版されますが、豪華装丁版はどのような位置づけですか?

いつも書店に並ぶ写真集を対にして写真展をやっています。点数も多く、解説やデータも入れて、ご自宅に帰ってゆっくりレンズや撮った時の状況なども楽しんでいただけるようになっています。一方、豪華装丁版は解説はなしで写真展と同じスタイルで見せることで、ご自宅にお持ち帰りいただける展示空間のようにお楽しみいただけます。

-今回ラスター、ファインアートペーパーの2種類の用紙を使用した2冊組ですが、ここにいたった経緯を教えてください。

最初は展示作品がラスターだったので、写真集もラスターで、と思っていたのですが、遊び心というか、新たこころみとして、桜の和のテイストもだしたいな、と思いました。日本人が一番好きな花でもありますしね。そんなときに和紙テイストのアート紙でプリントするのもありかなって思ったんですよね。 そこで試しにテストプリント何枚か出してみたら、絵柄によって合う、合わないはあるものの、ピッタリはまる作品もあったんですよね。あら?これで2冊組も素敵なんじゃないかな??と。そう考えだしたらどんどんイメージが膨らんできて、アイデアを出し始めたら止まらなくなって。結果、無理を言って(笑)今回の豪華な2冊組写真集になりました。

-風景写真とファインアート紙の相性はどうでしたか?

基本的には風景写真の輝き、光沢感などはプラチナグレードやラスターのほうが合うとは思います。作品は選びますが、日本画のように見える、ぴったりとくる作品もありますね。 見ていただく方にも写真の表現的に、ラスターは馴染みのあるものだと思いますが、ファインアート紙は馴染みのない方も多いと思いますので是非見ていただきたい。1点の作品だけはラスターとファインアートとの両方に入れているので、見比べていただくのも楽しいと思います。アマチュアや愛好家の方々が1冊から作る写真集の参考にしていただくのも良いかな、と思います。

-鮮やかで幅広い色彩の写真を撮られていらっしゃいますがDreamLabo 5000で出力された 写真集の色の再現性について、具体的な感想をお願いします。

やっぱりインクの多さ(7色)で色の表現の幅は広がります。私はより光沢感をリアルに出すために自分でも染料を使っているので、すごく気に入りました。自分のイメージがそのまま出せるな、と思いました。

-最初のテスト出力時に色見本と比較してどう感じましたか?

若干鮮やかに出る傾向があるな、と思ったのでそこは微調整させていただきました。 鮮やかでありながら、過剰になりすぎず、というところがデータで調整した部分でした。 色転びがないので、何度か修正を重ねるごとに色見本に近づき、最後は納得のいく色に仕上がりました。

桜ってピンクのイメージがありますよね。でもピンクにも白っぽいもの、南国の濃いピンク、色々ある。同じ桜の木でも時間帯によってもピンクの出方が違います。 今回DreamLabo 5000では思い描いたピンクを出すことができました。そういうところも今回桜の写真集は良くできているな、と思いますね。拘りのピンクだったので、よかったです。

-自然の色がそのまま再現されていますね。

撮影後の加工はほとんどしません。色を変えたり、合成したりはしない。ホワイトバランスも基本的には太陽光で撮っていますので早朝や夜は自然に青い色が入ってきます。そういったところを大事に撮影しています。

-豪華装丁版「桜(はな)もよう」について、どのような思いで取り組まれましたか?

写真は「面」で見ますが写真集はめくってみるものですので、展示や並べてみるものとは違ってきます。開いたときの空気感、音、雰囲気、それはめくるたびにだいぶ変わっていくと思います。「-合い紙、タイトル、写真―」この流れにより一つの空気感を作り、めくっていって楽しくなるように工夫しています。見本ができたときに大きさも含めて、めくってみて違和感がなく、展示が蘇るような感覚を大事にしながら進めていきました。 デザイナーさんをはじめ色々な方の力を借りて作らせていただきましたが、一つずつ作っていく作業、何かを表現することは本当に楽しいですね。

「組む」楽しみもありますよね。愛好家の方も何かの記念に写真集をつくるときには流れを意識して作る、ということを考えてみると、写真集づくりが楽しいものになると思います。